第192章

スマートフォンが掌から滑り落ち、デスクの上で乾いた音を立てた。画面の明かりが消え、オフィスは再び静寂に包まれる。

姬野理绪は椅子の背もたれに体を預け、片手で目元を覆った。

指の隙間から、温かい雫が音もなく零れ落ちていく。

一方。

通話が切れたことを告げる無機質な電子音が、月城曜の広すぎる執務室に虚しく響いていた。

彼は受話器を耳に当てたまま身動き一つせず、画面が完全にブラックアウトしてようやく、ゆっくりと端末をデスクに戻した。

先ほどの、消え入りそうな「ありがとう」という言葉。それは彼の荒れ果てた心に落ち、重くはないが、無視できない痒みを残していった。

折り返すこともせず、書類...

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