第227章

港は何も答えなかったが、傷だらけの船を拒むこともしなかった。

二人だけの静寂は、翌朝の緊急連絡によって破られた。

電話は「律心」研究センターの副手からだった。その声は極度の緊張で張り詰めていた。

「姫野博士、大変です。柘植俊介博士が昨夜深夜に辞表を提出し、現在連絡が取れません」

「ワークステーションのログを確認したところ、彼は離職前に『明星プロジェクト』第三フェーズの基礎環境シミュレーションデータをコピーしていました」

姫野理緒は受話器を握る手に、一瞬だけ力を込めた。

『明星プロジェクト』は彼女が主導する次期攻略案件であり、柘植俊介は彼女が手塩にかけて育てたコアメンバーで、データ...

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