第26章

闇夜に溶けていく背中を見つめ、姫野夏実の唇がゆっくりと弧を描く。それは、毒を孕んだ極めて悪辣な笑みだった。

(アリス。もうすぐよ。あんたは神壇から転がり落ちる。企業秘密を盗み、雇い主を害そうとした、誰からも唾棄される詐欺師としてね)

……

姫野理緒に割り当てられた仮の部屋は、研究と調剤の便宜を図り、療養所の中で最も静寂に包まれた区画にあった。

たった今、律ちゃんが確保してくれたルートでこっそり会いに来てくれた心ちゃんを寝かしつけ、自室へ戻ろうとしていたところだ。

母と娘、二人きりの束の間のひととき。それだけが、この数日間における彼女の唯一の救いだった。

彼女が立ち去った直後、入れ...

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