第33章
「ありがとう」
姫野理緒は思わずそのジャケットを強く掴み、体を包み込むように襟元を引き寄せた。
月城曜は彼女の傍らに立っていた。その長身が落とす影が、彼女の華奢な体をすっぽりと覆い隠す。
彼女の蒼白な横顔と、微かに震える肩を見つめる彼の掌が、火傷のように痛んだ。
だがその痛みなど、胸の奥で燃え盛る名状しがたい苛立ちの炎に比べれば、取るに足らないものだった。
鈴木海斗が救急箱を提げて早足で歩み寄り、眼科の権威である姫野理緒にそれを手渡す。
「月城さん……」
「ここでいい」
月城曜の声は低く沈んでいた。姫野理緒はすぐに携帯用の医療機器を開き、彼の目の検査を始める。
綿棒に薬液を...
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