第35章

しばらくして、月城曜はふと低く笑った。だがその笑い声には、骨の髄まで凍るような寒気が滲んでいた。

「アリス……」

彼はその名をゆっくりと反芻する。瞳の中にあった疑惑と探るような色は、やがて氷のような納得へと変わっていった。

ついに、辻褄が合ったのだ。

これまでの疑念はすべて、「アリス=姫野理緒」という前提の上に成り立っていた。

だが今にして思えば、その前提自体が根本から間違っていたのだ。

そもそも、姫野理緒とは何者か。

あの顔以外には何一つ持たぬ、ただの孤児ではないか。

その彼女が、強大な権勢を誇る藤堂家と関わりを持てるはずがない。

ましてや藤堂家の当主が自ら出向き、月城グ...

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