第43章

西村夫人はバツが悪そうに愛想笑いを浮かべると、適当に理由をつけてそそくさとその場を後にした。

残されたのは、姫野理緒と月城曜の二人だけ。

あたりには、奇妙な沈黙が漂っている。

「お先に失礼するわ」

理緒はそう切り出すと、きびすを返して自分の車へと歩き出した。

月城曜はその背中を、複雑な眼差しで見送った。

運転席に滑り込み、ハンドルを握った手はまだ微かに冷たかった。

理緒はシートに背を預け、瞼を閉じる。先ほどの光景が、脳裏で何度もリフレインする。

彼の何気ない身振り、それを瞬時に理解する自分。

彼の眼差しひとつで通じ合う、阿吽の呼吸。

あまりに馴染みすぎていて、心がざわつき...

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