第45章

それは、堅固で力強い抱擁だった。

薄い生地越しに、彼の腕の硬質な筋肉と、掌から伝わる灼けつくような熱が鮮明に感じ取れた。

馴染みのあるシダーウッドの香りが、彼の微かな体温と共に鼻腔をくすぐる。

姫野理緒の体は、瞬時に強張った。

まるで時間がスローモーションになったかのように、彼女の全神経が肩に置かれたその手に集中する。

すぐに突き飛ばすべきなのに、体は金縛りにあったかのように微動だにしない。

人混みが激しすぎて、退路がなかったからかもしれない。

あるいは、この唐突な庇護によって、常に張り詰めていた心の糸が、一瞬だけ緩んでしまったからなのかもしれない。

月城曜自身も、まさか自分...

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