第54章

「失せろ!」

月城曜は凄まじい力で、その手を振り払った。

激痛で意識が霞む中、残った本能が近づくものすべてを敵とみなしていた。

視力は失われているが、聴覚と触覚は異常なほど研ぎ澄まされ、わずかな物音さえもが神経を削るノイズとなって彼を苛む。

突き飛ばされた鈴木海斗はよろめきながらも、苦痛にのたうち回る主人の姿に焦燥を募らせた。

この状況を鎮められるのは、ただ一人しかいない。

震える指で、彼はある番号をダイヤルした。

その時、姫野理緒はちょうどバスタブに身を沈めたところだった。浴室の外で携帯が鳴り響く。鋭い着信音だ。

無視しようとしたが、音は執拗に鳴り止まない。

仕方なくバス...

ログインして続きを読む