第100章

車は山の麓で止まり、二人はそこから、辛うじて道と分かる山道を登り始めた。

山自体はそれほど高くはないが、道は雑草に覆われ、勾配も急だ。

新館秀樹は紳士らしく常に先を行き、時折振り返っては橘詩織に手を差し伸べ、彼女を引き上げた。

彼の手のひらは温かく力強い。そこには、人を安心させる不思議な力が宿っていた。

山頂に辿り着く頃には、東の空が白み始め、群青の天幕から星々が静かに姿を消しつつあった。

視界が一気に開ける。山頂の冷たく澄んだ空気が、肺の奥まで染み渡るようだ。

眼下には小さな町並みが、そして遠くには都市の輪郭が、朝の微光の中でぼんやりと浮かび上がっている。

二人は平らな大岩を...

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