第108章

どれくらいの時間が経ったのか。橘詩織は、ぼんやりとした痛みと鼻をつく消毒液の匂いの中で、ようやく意識を取り戻した。

重い瞼を押し上げるようにして目を開けると、最初に見えたのは病院特有の無機質な白い天井だった。

麻酔の効果が薄れつつあるのか、右上腹部に走ったメスの痕が鈍く疼き始めている。何が起きたのか状況が飲み込めず、下手に動くこともできない。彼女は乾ききった唇を合わせ、喉に張り付いた唾をどうにか飲み込んだ。

喉が焼けつくように渇いており、唾を通すだけで火に炙られたような激痛が走る。

指先をわずかに動かし、喉を潤す水がないかと視線を巡らせようとしたその時、彼女の動きがぴたりと止まった。...

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