第111章

橘詩織の冷静かつ決絶とした言葉、そして拒絶を示すように向けられた背中は、まるで土砂降りの雨のようだった。西園寺玲央の胸に僅かに灯りかけていた、関係修復への淡い期待の種火は、無情にも掻き消された。

彼はベッドの傍らで立ち尽くしたまま、彼女の華奢な背中を見つめる。かつてない無力感と焦燥が、胸の奥から込み上げてくるのを感じていた。

病室の空気は凍りつき、重苦しい沈黙だけが二人を包んでいる。

どれくらいの時間が過ぎただろうか。橘詩織が僅かに身じろぎした。表情は強張り、屈辱を耐えるかのように唇を噛んでいる。

麻酔が完全に切れたのだ。傷口の痛みが鮮明になり、長時間の臥床による不快感も募る。とりわ...

ログインして続きを読む