第118章

「レオ、あなたたち……」

白川亜希は診断書を抱えたまま、オフィスの真ん中で躊躇うように足を止めた。進むべきか退くべきか迷っているような素振りだ。

やがて彼女の視線が吸い寄せられるように、デスクの上の黒い物体へと落ちる。何かを察したのか、その瞳に暗い色が走り、口元には微かな笑みが浮かんだ。

なるほど、そういうことか。

事態を把握した彼女の胸中に得意げな感情が湧き上がる。だが、それを表に出すことはない。あくまで驚いたふりを装い、視線を泳がせながら、わざとらしく半歩後ずさってみせた。

その拙劣でありながらも計算高い演技を、橘詩織は冷めた目で見つめていた。

胸の内で冷笑が深まる。やはり、...

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