第十三章

西園寺夫人は、自身の威厳が度重なる冒涜を受けたことに、怒りでわなないていた。

その目、その眉尻から滲み出る嫌悪感を目の当たりにし、橘詩織はもう仮面を被り続ける気力を失った。温順で賢淑な妻、孝行者の嫁――そんな演技はもう終わりだ。

どうせ西園寺夫人は自分を認める気などないのだ。どれほど尽くそうと、徒労に終わるだけである。

詩織は彼女を見据え、初めて反論を口にした。決して大きな声ではなかったが、静まり返ったリビングにはその一言一句が鮮明に響き渡った。

「夫の手綱を握れていないと私を指弾するより、ご自身の息子さんを教育し直してはいかがですか? 妻帯者の身でありながら、外で他の女と情事に耽っ...

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