第152章

橘詩織は気づいていなかったが、レストランの吹き抜けを見下ろす二階の回廊、その手すりの傍らに、一人の男が仁王立ちしていた。

西園寺玲央の指に挟まれた煙草は、すでにフィルターの際まで燃え尽きている。だが彼は、指先に迫る熱さを感じる余裕すらなかった。ただひたすらに、眼下の個室にいる人影を凝視している。

その角度からは、霧島湊が身を乗り出し、橘詩織の髪を整える一部始終が手に取るように見えた。女は避ける素振りも見せず、男の指先は親密に触れる。暧昧な照明の下、その場の空気は刺すほどに甘く、睦まじい。

匿名の写真が届いた時、彼はまだ半信半疑だった。

写真の中の橘詩織と霧島湊は向かい合って座り、淡い...

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