第155章

「橘詩織、最後に三秒だけやる。考え直せ」

 西園寺玲央は彼女を睨みつけた。その瞳は陰鬱で、全身から発せられる威圧的な気配は、周囲の空気を凍りつかせるほどだ。

 だが、橘詩織は聞こえなかったかのように、ただ前を見据えて歩き続けた。

 それを見た男の頬の筋肉が、ピクリと引きつった。驚愕は瞬く間に激昂へと変わり、やがて恐ろしいほどの殺気を帯びていく。

「いいだろう、上等だ!」

 ドン、と鈍い音が響く。彼がステアリングを拳で殴りつけた音だ。

 激しく胸を上下させ、怒りに震えている。

 彼は橘詩織の決然とした背中を食い入るように見つめると、次の瞬間、エンジンを始動させた。アクセルを強く踏...

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