第161章

かつては思慕や慈愛、あるいは切なささえも湛えていたその双眸。だが今は、ただただ凍てつくような冷たさだけが広がり、怒りに歪む彼の形相を鮮明に映し出していた。

橘詩織は、火を噴かんばかりの彼の視線を真っ向から受け止め、身動ぎひとつしなかった。

胸を苛んでいた痛みはとうに麻痺し、今はただ、果てしない徒労感だけが澱のように沈んでいる。

彼女は彼を見つめ返し、そして極めて緩慢な動作で、一つ頷いた。

「はい」

自分のものとは思えないほど、恐ろしいまでに静かな声だった。

西園寺玲央はその場に立ち尽くした。その一言を聞いた瞬間、胸が激しく波打ち、瞳の奥には誰にも読み取れぬ苦痛と激情が渦巻いた。

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