第163章

第1章

橘詩織の口調は淡々としており、取り付く島もない。徹底したビジネスライクな態度だ。

小金の顔から、愛想笑いが引きつって消えた。

彼は高を括っていたのだ。女で、しかも落下傘人事。どうせお飾りか、適当に御せる相手だろうと侮っていたが、まさか着任早々これほど強気に出るとは予想外だった。

膨大な帳票や人事資料など、急に言われて用意できるわけがない。ましてや各部署の古株連中ときたら、時間通りに出社する人間が何人いることか。

「橘社長、それは……少々時間が厳しすぎます」

小金は揉み手をしながら、なんとか妥協点を探ろうとした。「資料の整理には時間がかかりますし、今日は月曜日ですから、責任...

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