第166章

橘詩織はUSBメモリを指先で一寸ほど前へ押し出すと、氷のように冷徹な声で告げた。

「今回だけは見逃してあげましょう。ただし、条件があります。今すぐ静かに立ち去ること。引き継ぎ業務は滞りなく済ませなさい。そして、不正に得た利益は期限内に全額返還すること。もしこれ以上、誰かを扇動して騒ぎを起こしたり、悪意を持って画策したりするようなら……」

彼女の声色が、鋭利な刃物のように変わる。

「その時は、このUSBの中身が即座に検察と警察の手に渡ることになります。そうなれば、あなたたちが直面するのは単なる『解雇』では済まされませんよ」

「体面を保って去るか、それとも刑務所の中で反省するか。自分で選...

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