第179章

どれほどの時間が経過したのか。数分だったかもしれないし、もっと長い時間が流れたのかもしれない。鋭利な頭痛が、彼女を無意識の闇の底から現実へと引きずり戻した。

項(うなじ)には鈍い痛みが走り、頬は冷たく粗野な地面に押し付けられている。鼻腔を衝くのは塵埃と鉄錆の腥(なまぐさ)さで、あの吐き気を催すような化学薬品の臭いはもうしなかった。

橘詩織は弾かれたように瞼を見開いた。

視界は酷く霞んでいる。焦点が合うまで数秒を要したが、やがて周囲の光景がおぼろげながら輪郭を結び始めた。

そこは廃倉庫のようだった。空間はやたらと広いが、物陰に埃を被った麻袋が幾つか積まれているだけで、酷く殺風景だ。

...

ログインして続きを読む