第180章

一秒、また一秒と時間が過ぎていく。だがその一秒が、まるで一年にも感じられるほどの長さだった。

橘詩織は自身の心臓が早鐘を打つ音を聞き、冷や汗が背中のシャツをじっとりと濡らしていくのを感じていた。

やがて、男がゆっくりと、一歩また一歩と陰から姿を現した。

彼は橘詩織の数歩手前で足を止め、薄暗い光の中で、無事なほうの右眼で彼女を値踏みするように見つめた。彼女の言葉の真偽と、リスクを冒す価値があるかどうかを計っているようだ。

「てめぇ……本当にそんな大金持ってんのか? 今すぐ振り込めるのか」

男の声は、紙やすりのようにざらついていた。

「あります!」

橘詩織は即座に答えた。心臓が今に...

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