第187章

あの夜、犯人が見せた凄絶な形相と、その後の自殺の報せを思い出し、橘詩織は思わず深い嘆息を漏らした。そして、受話器の向こうへ頷くように声を返す。

「承知しました、霧島社長。ありがとうございます」

ふとあることを思い出し、彼女は言葉を切り、感謝の念を込めて続けた。

「あの晩は本当に助かりました。霧島さんがいらっしゃらなければ、今こうして無事に座っていることさえできなかったでしょう。感謝の印と言ってはなんですが、今夜、お食事でもご馳走させてください」

橘詩織は思い返していた。今回に限らず、前回もまた、霧島湊は危機の瀬戸際で彼女を救ってくれたのだ。

この男に対する恩義は、もはや数え切れない...

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