第192章

二人は前後して歩き、重苦しい沈黙を保ったままエレベーターホールへと向かう。箱が降下を始めると、狭い空間は再び静寂に包まれた。

三水真司は何かを言いかけたようだったが、橘詩織の凪いだ横顔を盗み見て、言葉を飲み込んだ。

扉が開くと、そこは地下駐車場だ。橘詩織はそのまま車に向かい、帰路に就くつもりだった。だが、三水真司に別れの挨拶をしようと振り返った瞬間、彼女の視線は、何か言いたげにこちらを見つめる彼の瞳とぶつかった。

不意に視線が絡み合い、三水真司は唇を引き結ぶ。顔を赤らめ、長い躊躇いの末に、ようやく気まずそうに口を開いた。

「橘社長、もう終電がなくて……送っていただけないでしょうか」

...

ログインして続きを読む