第195章

太田社長が言葉を切ると、橘詩織の表情は凪いだ湖面のように動じなかった。ただ、箸を持つ手がほんの一瞬止まっただけだ。

すぐに何事もなかったかのように口を開く。

しかし、その答えはどこか要領を得ない曖昧なものだった。彼女は適当な言葉でその場を濁すと、自ら別の話題を切り出した。

太田社長も心得たもので、深く頷いて茶を飲み干すと、詩織の誘導に乗って自然とビジネスの話へと移行した。

一方、向かいのボックス席では。

白川亜希の瞳が怪しく揺らめいた。彼女もまた、橘詩織たち一行に気づいていたのだ。そして何より、詩織が自分たちを完全に無視している態度にも。

亜希は心の中で冷ややかに鼻を鳴らし、口元...

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