第202章

「橘社長、どうか落ち着いてください。これ以上は私が困ります」

秘書は泣き出しそうな顔で懇願する。中の主の意向も、目の前の女性の気性も熟知しているだけに、進むも地獄、退くも地獄といった有様だ。

「困る、ですって?」

橘詩織は口の端を歪めたが、その瞳はまったく笑っていない。

「彼に直接出てきて説明させるか、私を通せばいいのよ。そうすれば、あなたは困らなくて済むわ」

言い終わるや否や、彼女は迷うことなく、秘書の腕とドア枠の隙間を強引にすり抜けようとした。

秘書は仰天し、慌てて手で遮ろうとするが、体に触れるわけにもいかず、無様なダンスを踊るように狼狽える。その混乱の最中、聞き覚えのある女...

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