第30章

黒塗りのマイバッハの後部座席。橘詩織は頬杖をつき、窓の外を流れる街の灯りをぼんやりと眺めていた。

西園寺快が何を企んでいるのかは分からない。

だが結局のところ、詩織はその提案に乗った。彼の車に同乗することを選んでしまったのだ。

西園寺快はバックミラー越しに視線を投げかけ、意味ありげな笑みを浮かべる。

「義姉さんもよほど離婚したいみたいだね。玲央兄さんにずいぶん傷つけられたと見える」

詩織が沈黙を守っていると、彼はさらに焚きつけるように言葉を継いだ。

「兄さんの女癖の悪さは今に始まったことじゃないけど。僕が知る限りでも十人は下らないな。その中でも、義姉さんが一番長く続いたほうだよ」...

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