第36章

いつの間にか、窓の外はしとしとと雨が降り始めていた。

橘詩織は音に誘われるように視線を上げた。どれほど呆けていたのだろう。空にはすでに薄闇が漂っている。

彼女は立ち上がり、落地窓のそばへ歩み寄った。この角度から見下ろすと、雨煙に煙る大都会の夜景が一望できる。

煌めくネオン、織物のように交差する車のライト。だが、その華やかさも、橘詩織の心底にある冷たさを温めることはできなかった。

彼女は重たい心を持て余し、小さく息を吐いた。

他人の顔色を窺うような生活は、もううんざりだ!

結局、他人は当てにならない。自分自身の力で強くなるしかないのだ。

物思いに耽る間もなく、握りしめていたスマー...

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