第37章

高田社長の言葉が落ちると、橘詩織の表情は気づかれぬほど微かに強張った。だが、その笑みが崩れることはない。ただ、企画書を挟んだファイルを握る細い指に力がこもり、関節が白く浮き上がっていた。

「高田社長、理由をお聞かせ願えますか?」

彼女の声は平穏だった。

「私たちはこのプロジェクトのために長い時間をかけて準備してきました。デザインコンセプトも実行案も、市場の試練に耐えうると確信しております」

「橘さん、我々もプロ同士だ。それに霧島社長との付き合いもある。腹を割って話そう」

高田社長は少し言葉を選んでから、口を開いた。

「白川さんの提案も悪くないんだ。我々の取締役会の期待値には達して...

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