第39章

橘詩織は足を止め、視線を上げると、少し離れた場所に停まっている見慣れたリムジンが目に入った。

「西園寺社長、物事には順序というものがあるでしょう」

霧島湊がついに口を開いた。その口元は笑っているが、目は全く笑っていない。

「実を言うと、私がこんな時間にここに来たのも、彼女を送るためなんですよ」

西園寺玲央は動きを止め、目を細めて相手を睨みつけた。辺りに沈黙が降りる。二人は互いに言葉を発さず、まるで闇夜に潜む獲物を狙う猛獣のように対峙していた。

橘詩織は目の前の二人の男を見て、これ以上ないほどの皮肉を感じた。

片や優しさを装いながら腹を探り合い、片や所有欲を剥き出しにして威圧する。...

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