第48章

「成全(せいぜん)」――つまり、二人の関係を終わらせて彼を自由にするという言葉を聞いた時、橘詩織(たちばなしおり)は自分の胸の内に渦巻く感情が何なのか、言葉では言い表せなかった。

膝の上に置いた手が、微かに震えながら握りしめられる。彼女は小さく息を吐き出すと、顔を上げ、西園寺玲央(さいおんじれお)の少し充血した目元を真っ直ぐに見つめて言った。声は穏やかだった。

「分かったわ。明日は必ず行ってあげる。すっぽかさないでね」

「安心しろ。お前の望み通りにしてやる」

男は低い声で、どこか嘲るように吐き捨てた。苛立たしげにネクタイを緩める。広すぎるリビングの空気が、急に肺を圧迫してくるかのよう...

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