第49章

橘詩織が西園寺の本邸に辿り着いた頃、日はすでに西に傾き、残照が空を茜色に染め上げていた。肌を撫でる風には、どこか冷たさが混じっている。

車を降りた詩織は、その場に立ち尽くし、足を踏み出すのを躊躇った。

祖父が何を思って呼び出したのかは分からない。だが、離婚の件が露見したことは間違いないだろうという予感があった。

あるいは、西園寺の義母が、詩織に向けられた「跡取りを産めない」という罪状を、彼に告げ口したのかもしれない。

どちらにせよ、詩織にはまだ、祖父に弁明する心の準備ができていなかった。

西園寺家の誰に対しても顔向けできる自信はあるが、唯一、真心を持って接してくれたこの老人に対して...

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