第54章
西園寺玲央は電話を切ると、ようやく目の前の人物へと視線を向けた。その瞳に宿るのは、先ほどまでとは打って変わった冷徹なまでの他者行儀さだ。
橘詩織の視線は宙を彷徨っていた。書斎の巨大なフランス窓の向こう、眼下に広がる都会の喧騒を眺めていた彼女は、男の視線を感じて我に返る。その声は二日酔いのせいで、ひどく掠れていた。
「昨日、三十分だけ話を聞くって約束してくれたわよね」
橘詩織は唇を微かに震わせ、言葉を継ぐ。
「私が何を言いたいかは分かってるはずだから、多くは語らないわ。ただ……これっきり、最後にもう一度だけ橘家を助けてくれないかしら」
「最後、か?」
西園寺玲央は不意に鼻で笑った。...
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