第64章
橘詩織は眉根を寄せ、ハッとして息を飲んだ。霧島湊の口端から滴る鮮血が、あまりにも目に焼き付いたからだ。
彼女は悲鳴に近い声を上げ、全身の力で西園寺玲央の手を振り払うと、霧島湊の元へ駆け寄った。
「霧島、大丈夫?」
橘詩織は唇を強く噛み締める。
霧島湊には、これまで幾度となく助けられてきた。そして今回もまた、自分のために西園寺玲央の鉄拳を受けたのだ。
この人情という借りを、いつ、どうやって返せばいいというのか。
問いかけに対し、霧島湊は浅く息を吸い込み、口内に広がる鉄錆のような血の味を飲み下した。彼は橘詩織に向かってかぶりを振ると、強張る頬を緩めて安堵させるような笑みさえ浮かべてみ...
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