第65章

すらりとした指先が画面を叩く。橘詩織がメッセージ画面を閉じようとしたその時、不意に鼻で笑うような音が聞こえた。

心臓が跳ね、詩織は驚いて顔を上げる。いつの間にか西園寺玲央が背後に立っていた。彼は詩織のスマホ画面を、穴が開くほど凝視している。

画面に並ぶ相手を気遣う言葉の数々が、玲央の網膜を焼き、最後に残った理性さえも焼き尽くしていく。

「橘詩織、そんなに急いであいつのご機嫌伺いか?」

彼は舌打ちし、傷ついた唇の痛みに顔を歪める。声は低く抑えられていたが、そこには隠しようのない怒気が孕んでいた。

詩織は気だるげに彼を一瞥し、間を置いてから口を開く。

「霧島湊さんが怪我をしたのは私の...

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