第4章 もう続けたくない

相葉詩礼視点

目を覚ますと、ベッドの端に赤坂里樹が座っていた。手には小さな紙のカップケーキ。てっぺんにはバースデーキャンドルが一本だけ刺さっている。壊れたブラインドから差し込む朝日が、炎を小さな星のように揺らめかせていた。

「誕生日おめでとう、十八歳の大人さん」

彼が慎重にキャンドルに火をつけると、オレンジ色の光がその顔を照らし出す。私は身を起こし、指にはめられたシンプルな銀の指輪を見つめる。胸の奥からじわりと温かいものが広がっていく。この小さなアパートも、この危険な少年も――いつの間にか、私の帰る場所になっていた。

「願い事をして」と、赤坂里樹が優しく言う。

私は目を閉じ...

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