第4章 もう続けたくない
相葉詩礼視点
目を覚ますと、ベッドの端に赤坂里樹が座っていた。手には小さな紙のカップケーキ。てっぺんにはバースデーキャンドルが一本だけ刺さっている。壊れたブラインドから差し込む朝日が、炎を小さな星のように揺らめかせていた。
「誕生日おめでとう、十八歳の大人さん」
彼が慎重にキャンドルに火をつけると、オレンジ色の光がその顔を照らし出す。私は身を起こし、指にはめられたシンプルな銀の指輪を見つめる。胸の奥からじわりと温かいものが広がっていく。この小さなアパートも、この危険な少年も――いつの間にか、私の帰る場所になっていた。
「願い事をして」と、赤坂里樹が優しく言う。
私は目を閉じ...
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チャプター
1. 第1章 心配しないで、誰にも傷つけさせない
2. 第2章 お互いを信頼できるかもしれない
3. 第3章 この人生に疲れたらどうする?
4. 第4章 もう続けたくない
5. 第5章 あなたのことを決して忘れなかった
6. 第6章 まるで過去の亡霊のようだ
7. 第7章 誰かに言ったら殺す
8. 第8章 一生君を守ると誓う
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