第7章 誰かに言ったら殺す

相葉詩礼視点

赤坂里樹のオフィスのドアの前に、私は立っていた。手のひらに、じっとりと汗が滲んでいる。

受付の女性がちらちらとこちらを見上げている。今にも吐きそうな顔をしている私を、いぶかしんでいるのだろう。

「赤坂さんにお会いしたいんです。急用です」

「アポイントメントはございますか?」

「昨日の会議に出席した、相葉詩礼だとお伝えください」

昨日も見た赤毛の男性が現れる。彼は訝しげな目で私を値踏みしてから、オフィスの方を顎でしゃくった。

「会ってくださるそうだ。手短にな」

中に入っても、赤坂里樹は顔さえ上げなかった。彼のオフィスは、金と権力をこれでもかと見せつけてい...

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