第18章 橘家

タクシーが病院の正面玄関に着くなり、千葉椿は相馬咲の腕を掴んだまま、ずるずると引きずって中へ入った。

外来ロビーに足を踏み入れた瞬間、相馬咲はようやく悟る。

さっきの椿の電話が、誰にかけられたものだったのかを。

目の前に立っていたのは、背の高い男。

その姿を見た途端、堪えていた涙が一気に溢れ出した。

「言一……」

けれど橘言一は、彼女に視線すら寄越さない。

その目に映っているのは、千葉椿――ただそれだけだった。

「どうした?」

椿へ向けられた声は、驚くほど柔らかい。

「相馬さんには、いろいろしてもらいましたから。今日は……お礼をしに来たんです」

そう言いながら椿は相馬咲...

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