第58章 その理由、いい。

千葉椿は頭の上に黒い線が何本も浮かぶのを感じながら、彼の腕に自分の腕を絡めた。

「行こ! ご飯。あとで矢野部長と西区のあの土地、見に行かなきゃ。伯父さん、かなり焦ってるし」

「うん」

羽鳥紅蓮は甘やかすように笑う。

二人は手をつないで歩き出した。

羽鳥紅蓮に一発蹴り飛ばされ、床の上で情けなく滑った寺内鈴は、目の奥に渦巻く憎悪に溺れそうになる。

「千葉椿……っ」

奥歯を噛みしめて吐き捨てると、スマホを取り出し、どこかへ電話をかけた。

◇

同じ頃。

千葉佳正と矢野炎は、店で食事をしていた。

「矢野部長。まずは一杯。今回の協業の成功を祈って」

千葉佳正がグラスを掲げ、矢野炎...

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