第85章 彼女は誘拐された

寺内奥様はそれを見て、いっそう取り乱した。涙が途切れることなく頬を伝う。

「レン、レン……そんなことしないで! すずはこの数日、外に出てもいないのよ。それに、その……ツバキ? そんな子、私たち知らないわ!」

羽鳥紅蓮の眼差しはさらに冷え切り、瞳の奥で黒い嵐が渦を巻く。

「寺内鈴。最後のチャンスだ。死にたくないなら、椿の居場所を吐け……」

寺内奥様は、羽鳥紅蓮が本気だと悟った。慌てて外へ飛び出し、羽鳥国隆に電話を入れる。

案の定、十五分も経たないうちに羽鳥国隆が寺内家へ現れた。玄関をくぐった瞬間、羽鳥紅蓮が寺内鈴の喉を掴み、そのまま持ち上げている光景が目に入る。胸の奥がひやりと震えた...

ログインして続きを読む