第112章

「すみません、土曜は予定がありまして」

東堂彦一は丁寧に、しかしきっぱりと断った。

白石郁美の胸に、すとんと落胆が沈む。

彼がそう言った時点で、もう判決は下っている。さっきまでの和やかな空気も、ただ彼の育ちと教養が作ったものに過ぎない――本当は、彼女だって分かっていた。

分かっているからこそ、なおさら手放したくなかった。こんな上質な男を、逃したくない。

白石郁美は意地も矜持もいったん脇へ置き、厚かましいと分かっていながら食い下がる。

「大丈夫です。東堂さんのご都合に合わせますから……もう一度だけ、チャンスをもらえませんか?」

東堂彦一の笑みが、わずかに薄くなる。

彼は遠回しに...

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