第137章

ドアを開けた瞬間。

外に立っていたのは白瀬冬弥だった。

端正な顔は生気を失い、目の下には青黒い隈。ネクタイは乱暴に緩められて胸元にだらりと垂れ、全身から刺すような殺気が立ちのぼっている。

温井知絵は、その場で固まった。

「媚薬」の熱なんて、一瞬で霧散した。

蝶の羽みたいなまつ毛が、かすかに震える。

そこにいるのは人間じゃない。巨大な虎だ。目が合っただけで『食いに来た』と分かる――そんな圧。

頭の中はひとつだけ。

どうしようどうしよう、今からドア閉めても間に合う!?

静寂が落ちる。

ドアノブを握る手に力がこもり、温井知絵は勢いよく閉めようとした。

「バン——」

だが、彼...

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