第14章

「冬弥お兄ちゃん、何見てるの?」

九条花奈が、ぼんやりしている彼の袖をくいっと引いた。

街路樹に視界を遮られ、向こうの様子はもう見えない。白瀬冬弥は視線を引き戻し、

「別に」

とだけ答えた。

前方の道を見据えたまま、胸の奥がずしりと沈む。

温井知絵は、彼のあとを追った。

東堂彦一は一本の木のそばで電話をしていた。背後の「小さな尾っぽ」がぴたりと付いてくるのに気づき、振り返って一瞥する。

温井知絵は、通話中だと分かった途端にはっと足を止め、慌てて距離を取った。少し後方、キノコみたいな形の東屋の中へ逃げ込む。

額を揉みながら、思う。

――私、バカすぎ。

東堂彦一が電話を切っ...

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