第160章

温井知絵は言葉を失った。

だが、来てしまった以上、どうしようもない。

彼女は改めて東堂彦一へ向き直り、皆の前で部下が上司に言うような口調を作って言った。

「社長、じゃあテレビでも見ててください。私、キッチン手伝ってきます」

東堂彦一は穏やかな薄笑いを浮かべる。

「知絵。もう退勤だ」

温井知絵「……!」

キッチンの入り口に立っていた三人「……!」

空気が、すとんと落ちた。

全員が金縛りにでも遭ったみたいに固まり、目には怯えと唖然とした気配、そして理解不能の茫然が滲む。

「どん——」

鈍い音。

高橋夏希の手からジャガイモが落ち、ころころと床を転がっていった。

小沢諒は涙...

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