第164章

そのメッセージは、入力欄の上にふわりと浮かんでいた。

『上がりたくないな。下まで持っていこうか?』

温井知絵はその一行を見つめ、心が宙づりになった気がした。

しばらくして、ようやく返す。

『もう食べました。今、会社に向かってます』

送信すると同時に、スマホの画面を消して脇へ放り投げた。

夏の陽射しは朝だろうと容赦がない。焼けつく光が顔面に突き刺さり、目を開けていられない。頭はぼんやり、息まで薄くなる……この感覚が、嫌いだ。

嫌い。嫌い。嫌い。

涙が滲みそうなほど眩む目を細めたまま、ふっと意識が空っぽになるような、どこか現実味のない瞬間が訪れる。次の刹那、知絵は勢いよく手を上げ...

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