第166章

数秒、空気が凍りついた。

白瀬冬弥は無表情のまま。

温井知絵はゆっくり顔を上げ、落ち着いた声で石原先生に言った。

「私は急ぎません。先に彼を診てあげてください。遅れたら間に合わなくて、葬儀屋行きになっちゃうかもしれないし」

「……」

石原先生は、恋だの愛だのに疎くても、バカじゃない。

突っ込まず、知絵の前に腰を下ろすと、靴を脱ぐよう促した。小さな革の足台に足を乗せさせ、手のひらに薬酒を垂らして足首を揉みほぐし始める。

「ちょっと痛いぞ」

「大丈夫です。平気」

口だけは強気。

――その強気が、あっという間に裏切られた。

……痛い。ほんとに。

「い゛た……っ」

叫びはし...

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