第185章

「洛川会長」

温井知絵は、わざとゆっくり言い直した。

東堂彦一が眉を寄せる。

「……そいつが、お前に会いに?」

彦一に、母と洛川会長の間に昔の何かがあるかもしれないなんて知られたくない。温井知絵は一瞬だけ迷ってから、無難なところへ落とした。

「父と母の……昔からの知り合いなの」

知り合い。友人でも、同級生でも、どうとでも取れる言い方。

……もっとも、洛川知邦の立場や交友関係を考えれば、教壇に立つだけの両親と接点があるとは思えない。そもそも世界が違う。

彦一はその曖昧さに気づいたのだろう。けれど、それ以上は突っ込まなかった。

「わかった。把握した」

温井知絵は、ようやく息を...

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