第19章

曲がりくねった廊下を歩きながら、温井知絵は神経を張り詰め、何度も背後を振り返った。

このホテルは妙に静かだ。行き交う途中、スタッフの姿ひとつ見当たらない。

静かすぎる――胸の奥がざわつくほどに。

しばらく進んでも誰もついてこないと分かり、ようやく肩の力が少しだけ抜けた。

考えすぎかもしれない。江崎千恵が卑劣な手を使うつもりなら、もっと前にやっている。わざわざ、自分が息子から身を引こうとしている今に仕掛ける必要はない。

補償金が惜しいのは当然だろう。でも白瀬家にとっては、こんな金額――ほんのわずかだ。

江崎千恵がそこまで愚かだとは思えない。

この先を曲がって、もう少し歩けば、さっ...

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