第190章

温井知絵「……」

安部美波「……」

二人は気まずいまま、ダイニングへ向かっていく男の背中を見送った。

せっかくこちらが必死に場を回して、いい感じに演じていたところへ、平然と割り込んできたあいつ。……性格が悪いにもほどがある。

二人とも、さっき彼が何を言ったのか聞こえなかったふりをした。片方はスマホをいじり、もう片方は髪をかき上げて、床まで届く窓の向こうの夕焼けを眺める。

「知絵さん、美波さん。先に食事にしませんか」

伊藤良国が穏やかな笑みで言った。

温井知絵は思う。今夜の夕食は、釘を飲み込むよりつらいかもしれない、と。

安部美波が立ち上がった。

「いいですね。機内であんまり...

ログインして続きを読む