第193章

重く冷えた声に、有無を言わせぬ威圧が滲んでいた。

温井知絵と安部美波が同時に振り返る。

開け放たれたオフィスのドア口に、東堂彦一が無表情で立っていた。佇まいも気配も、目に見えない圧で空間を押し潰すみたいだ。

――自分の許可もなく、勝手にこのフロアへ上がってきた誰かが気に入らない。そんな空気。

その背後で小沢諒が、平和大使みたいな笑顔を貼りつけている。この胃がきゅっと縮む修羅場を、なんとか救おうとして……まあ、効かないと分かっていながら。

「……あっ。温井秘書、お昼はご同行で外回りなんですね。私、知りませんでした」

安部美波が反射みたいな速さで言った。

続けて、さらりと刺す。

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