第195章

東堂彦一は、とうとう堪えきれなくなった。

力加減なんて考える余裕もないまま、安部美波を温井知絵から引きはがし、手首をつかんで椅子へ押し戻す。怒気を抑えきれない声が飛んだ。

「……自分が今、どんな格好してるか見てみろ!」

安部美波も、自分の癇癪が笑いものになったと気づいたのだろう。

――恥ずかしい。

両手で顔を覆い、ますます顔を上げられない。今の自分の惨めな姿を、彼に見られたくなかった。

温井知絵はティッシュで、自分の服に付いた涙と鼻水をぬぐう。

その視界の端で、東堂彦一が安部美波を叱りつけている。眉間には、はっきりとした怒り。

彼はたいてい、静かで、冷ややかで、余裕がある。

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