第203章

「……さあ」

矢野芹歌は首を横に振り、眉間にかすかな皺を寄せた。

高橋夏希はただの付き添いで、仮面をつけていようがいまいが、ここにいる連中の顔なんて十中八九わからない。

二人の様子が固いのを見て、声を潜める。

「どうした? この舞踏会、なんかヤバいの?」

矢野芹歌は少し考えてから、ふっと表情をほどいて笑った。

「松本夫人とは何度もお付き合いあるのよ。慈善家だし、ご本人も旦那さまも、ちゃんとしたお立場。ねずみ講の元締めみたいな人じゃないわ。今日はちょっと変ではあるけど、そこまで神経質にならなくても」

温井知絵は静かに返す。

「理屈はそう。でも人の心は読めない。私たちが疑った時点...

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